2011年9月
第66回 ちっちゃい命がくれたもの
あなたのお宅では、生き物を飼っていますか?
子どもがお祭りですくってきた金魚。
林でつかまえたカブトムシ。
スルメで釣ったザリガニたち。
我が家にもいろんな生き物が、入れ替わり立ち替わりやってきます。
おととしのクリスマスのこと。
「サンタさん」がテーブルの上に置いた箱をそーっと開けてみると・・・。
「きっ」と言ったような言わないような。
中から小さな小さなハムスターが顔をのぞかせました。
「うっわ、ハムスターだよ!」(だんなが同僚からもらったよう)
「名前はなんにする?」
「一匹は『さくら』だから(そう、すでに一匹いたんです)こっちは〜」
「さくらんぼ!」「長くない?」
「きらら!」「う〜ん」
「おくら!」「ない、ない」
「ショコラ!」「よし、きまり!!」
こうして「ショコラ」が我が家の仲間入りをしました。
ひまわりの種を、ほお袋いっぱいに詰め込むショコラ。
回し車を、一晩中ガラガラと回し続けるショコラ。
ケージから出すと食器棚の後ろに隠れて、なかなかつかまらないショコラ。
さくらとは気が合わず「別居」となりましたが、子ども達にはよくなつき遊び友だちになりました。
そして「その日」は、思いのほか早くやってきました。
その日私は、子どもより遅く帰ることになっていました。
遠くで仕事があったためです。
「きっと6時には戻れるから」
そう朝に伝えたものの、山王あたりで渋滞。
あせって電話を入れました。
「約束の時間より遅れそう!」
「お母さん・・・」
電話に出た娘のさびしそうな声。
「ごめん!なるべく早く帰る!」
「お母さん・・・ショコラが・・・ショコラが死んじゃった」
「え・・・?」そのままことばを失い「待ってて、今行くから」と電話を切りました。
帰りの時間が遅くなった申し訳なさと、渋滞で進まないもどかしさ。
家で待っている子どもと、元気だったはずのショコラ。
いろんなものが交錯しながら、ようやく家のドアを開けました。
と。
いつもならまだ外で鬼ごっこしているはずの息子が、明かりもつけずに座っています。
その手の中には、動かなくなったショコラ。
ずっと泣いていたのでしょう、目が真っ赤です。
「いつからそうしていたの?」
「学校から帰ってから」
じっとしているのが大の苦手な息子なのに、もう二時間近くもそうしていたなんて。
娘は何やら手を動かしています。
「ショコラを入れる箱を作ってるの」
見ると、小さな白い箱には、これまた小さな折り鶴がたくさん入っています。
「鶴、入れるの?」
「うん、ショコラが天国に飛んでいけるように」
「お花も入れたのね」
「うん、ショコラが喜ぶように」
ちっちゃい命がくれたもの。
お別れのさびしさ
生命のはかなさと重さ
命には限りがあるという現実
共にいられた喜び
ことこと動いた鼓動
生きるものの温かさと柔らかさ
そーっと、そーっとその中にショコラを眠らせ、息子がショコラに手紙を書きます。
ぽとぽとと涙を落として書き上げたそれには、こうしたためられていました。
「いままでありがとう。
てんごくでもいっぱいあそんでね。
またうまれてくるときは、いっしょになれるといいな」
若松亜紀(わかまつあき)先生
1968年秋田県生まれ。1990年、秋田大学教育学部幼稚園教員養成課程卒業。私立秋田南幼稚園に7年間勤務。シュタイナー教育を保育に取り入れる。閉園により退職。
保育経験や育児を綴ったエッセイ「心で感じる幸せな子育て」(ほんの木)を出版。2005年「粗食のすすめ」の幕内秀夫氏との共著「マンガでわかる食育」(かもがわ出版)出版。教育関係広報誌への連載、講演活動、ラジオ子育てコーナーなども担当。2006年4月には「子どもが輝く幸せな子育て」(ほんの木)を出版しました。
現在は秋田市の自宅で、「出会いと生きがいづくりの場、陽だまりサロン」を運営。毎日たくさんの親子連れでにぎわっています。夫と娘(華凛)と息子(飛龍)の4人暮らし。
陽だまりサロンのブログです。http://yaplog.jp/hi-damari/
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