最近「子ども事情」part 2 2005年10月
第4回目 孤育て
四歳の男の子は、園ではまったく問題がないといいます。ほかの子たちと一緒に食事もできるし、お昼寝もスムーズとのことです。ところが同じ子が、家では親のいうことを聞かず、偏食が強く、夜はビデオを観たりして遅くまで起きているそうです。
お母さんの話を聞くうちに、その理由がわかりました。ポイントは三つありました。一つは言葉かけの内容です。テレビアナウンサーのお母さんは、子ども言葉ではなく、大人の言い方で息子に語りかけているそうです。たとえば「世界には飢餓で苦しんでいる大勢の人たちがいます。食物は大切です」。これが、子どもが嫌いなものを食べないときの説明です。いうまでもなく四歳には難しすぎます。
「早く寝なさい」ではなく、「自分で考えて決めてください」というそうです。自分でしっかりと決められる子にしたいからとのことでした。子どもは時間への観念が未熟で、先を見越しての行動が苦手です。ましてや四歳です。自分にはできない判断を求められれば、子どもは混乱します。こういうことが積み重なると、大人のいうことを聞かなくなります。
お母さんは、子どもと向かい合いきちんと話し合うそうです。ところがよく聞くと、子どもと一緒に何かをやるのは苦手のようです。一緒に料理を作る、掃除をするなど、これまでしたことがないそうです。一緒の買い物も苦手とのことでした。子どものペースがわからないからのようです。食事も、子どもはおおむね一人で食べているといいます。
話すうちにお母さんが突然泣き出しました。頭でっかち、子ども中心主義、子育てが下手など、まわりからいわれてきたそうです。それでも自分の考えを変えられなかったようです。話すだけでは「困ったお母さん」に思えます。しかし泣いている姿から、育児に自信が持てず、本当は「困っている親」なことがわかりました。
〈弧育て〉、つまりは孤独での子育ては辛いものです。せっかく親になれたのに、心からの喜びを味わえないお母さんが可哀想でなりません。フランクに相談できる人が身近にいれば、子育てを楽しめるのにとも思います。
湯汲英史(ゆくみ えいし)先生
1953年生 早稲田大学 第一文学部 心理学専攻卒 社会福祉法人 発達協会 常務理事/心理・言語担当 言語聴覚士 精神保健福祉士 早稲田大学客員教授
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