最近「子ども事情」AD/HD の理解と対応 2002年7月
第9回目 高めたい身の回りの力
偏食と修正しにくい思い込み
多動な子どものなかには、肉とご飯しか食べない、野菜は一切ダメ、といった極端な偏食を示す子がいます。こういう子ども達は、給食や合宿などの際の食事が、とても苦痛となります。いっさい人の話を聞けず、食事面での指導を受けたりすると大騒ぎとなることもあります。食事をいっしょにしているほかの子達から、あまりの大騒ぎに注意を受けたりします。このようなことが続くと、仲間との関係に支障が生まれたりします。実はこういう子の場合も、じっくりと指導を続けていくと、あっけなく偏食がおさまったりします。
多動な子達は一般的に、何事も「好き−嫌い」で判断しがちです。それが食事面にあらわれると極端な偏食となります。思い込みが激しい子ども達は、いったん嫌いとなると、それを自分ではなかなか修正できません。
気をつけたい排泄とマナー
多動の子達のなかには、おもらしや夜尿といった問題を抱える子たちがいます。おもらしはないけれども、トイレの使い方やマナーまで含めると、問題がないとは決していえないという子はすくなくありません。
何かに夢中になると面倒がってトイレを嫌がる、ぎりぎりまで我慢して洩らしてしまう。特に男の子に多いのが、便器やまわりを汚すことです。汚れたトイレを掃除しながら、使い方をきちんと教えなくては、と痛感する大人も多いことでしょう。この他にもドアをきちんと閉めない、手を洗わないなど、子ども達に共通した問題があります。これらは細かく注意していく必要があります。
話はややずれますが、子ども達が排泄への意識を高め、自立を進めていく時期があります。その時期を逃すと、それらがなかなかスムーズにいかなくなります。なかでも、「下着が汚れて気持ちが悪い」という感覚は重要です。この感覚が広がって、トイレをきれいに使うという意識にもつながるようです。この感覚をできるだけ幼児の間に育て、きちんと自立させたいものです。
身辺技術と自己コントロール力
多動な子達についての悩みを聞くたびに、 AD/HD の子どもを育てる大変さをあらためて感じます。家族が抱える大変さの背景には、生活リズムの不安定さや偏食、排泄の問題があります。これらのことは一見、「多動」とは無関係のようです。しかし、子どもの生活リズムが安定し、身辺の技術を獲得すると、落ち着きのなさの面で、時に驚くほどの効果と、そして家庭生活の安定をもたらします。
それは、生活リズムの安定と身辺技術の獲得が、子どもの精神安定に重要な役目をもっているからと思います。それがあってはじめて、子どもは自立への気持ちを強くします。その気持ちが意欲を生み、集中の面などで「自己コントロール力」を高めると考えています。
湯汲英史(ゆくみ えいし)先生
1953年生 早稲田大学 第一文学部 心理学専攻卒 社会福祉法人 発達協会 常務理事/心理・言語担当 言語聴覚士 精神保健福祉士 早稲田大学客員教授
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