子育て相談室-青年期 2005年1月
お金を盗む
高校1年の長男ですが、家のお金を勝手に持ち出しているようです。増額を要求するわけでもなく、バイトを始める様子もありません。彼には毎月1万円を与えています。この中で食事や携帯料金を払わせています。交通費や衣類などは親持ちです。通話料がかさんだ時は、お年玉などを貯めたお金で補っていました。どのように対処すべきでしょうか。
こういう質問をよく受けます。聞きながら問題と思うのは、お金を幾ら盗られたかを、親が正確には把握していないことです。泥棒と一緒だと思うと緊張してしまう、なるべくそう思わないで暮らしたい、家は唯一ほっとできる場だから、という話を聞きます。これくらいのお金で本人の気が晴れるならば大したことはない、との話しもありました。悪さをしてみたい歳ですから、との意見も聞いたことがあります。
非行は「時間」⇒「お金」⇒「校則・法律」の崩れと進む
非行の専門家ではありません。ですから一般的ではないかもしれません。これは医療機関で目撃した話と思ってください。体験的に、非行はまずは帰宅時間の崩れから始まるように思います。家族と一緒の食事への拒絶、家族への帰属意識の弱まりがあるといえます。遅くなる理由が、仲間が誘うからであれば、そちらの方が優先されます。こうなれば、ますます帰宅時間が怪しくなってきます。
仲間と楽しい時間を過ごすには、ときにお金が必要です。仲間に振舞うために、仲間の一員になるために家からお金を持ち出すことがあります。こうなるともっと家族から気持ちが離れてしまいます。
所属する仲間集団に、独特の文化、価値判断が生まれれば、外の世界の校則や法律を一気に破り出す可能性があります。こういう場合は、早く悪い仲間と切り離すべきです。価値判断が固まると、大人の話をまったく受け付けなくなることがあります。
何となく盗む
お金を盗む背景に、仲間がいない場合もあります。何となく盗ってしまいます。反省の気持ちが弱く、繰り返すのではないかとの印象を持ちます。「お金を盗んではいけない」というのは道徳で、5〜6歳頃からわかってきます。ただこの道徳よりも以前に、子どもは「自分の物」と「他の人の物」の区別ができます。物があふれる豊かな世界では、この区別がきちんと理解しにくいのかもしれません。
「大切な物」への鈍感さ
家族から盗む場合は、人が大切にしている物への鈍感さがあるように思います。家族の側も、幾ら盗られたかがわからない状態だとすれば、お金を大切にしていないともいえます。だから子どもは盗んでもいいと勘違いするのかもしれません。まずは、子どもにお金を盗まれないように大事にしまいます。次に、お金を盗む背景に何があるのかを探ります。その理由によって、その後の対応を変える必要があります。
湯汲英史(ゆくみ えいし)先生
1953年生 早稲田大学 第一文学部 心理学専攻卒 社会福祉法人 発達協会 常務理事/心理・言語担当 言語聴覚士 精神保健福祉士 早稲田大学客員教授
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