e-ha 通信 2007年8月
第11回 慣れって怖い!
永年使っているスピーカーが壊れてしまいました。新しい物を購入しようとも考えたのですが、とても気に入った音であった為、1ヶ月以上悩んだ末修理することに決めました。
35年前の製品ですから買い換えるのが当然でしょう。メーカーは既に無く、修理の術もありません。結局、地方にあるスピーカー専門の修理工房で直し調整してもらいました。
修理前は全く音に問題ないものと思っていたのですが、スピーカー本来の音が蘇り驚きました。古くなり性能が落ちていたことに気がついていなかったのです。
私の恩師の話です。見た目が非常に悪いと家族から指摘を受けた為に入れ歯を作りに来院された患者さんがいました。入れ歯は壊れ口の中の半分しか入っていませんでした。信頼していた先生に作ってもらい、壊れていてもよく噛めるので今まで使っていたそうです。
入れ歯が得意な恩師は、非の打ち所の無い入れ歯を作りその方に渡しました。結果は、何故か全く噛めない。痛いところはないけれど・・・!?
私は、新しく入れ歯を作りたいという患者さんが来院されると・・・ほとんどの患者さんはすぐにでも新しい入れ歯を欲しがるのですが・・・まずは今使っている入れ歯の修理を行います。新しい入れ歯を作っている最中に使用中の入れ歯の修理や修正に時間を取られることがあるからです。
ですから、患者さんから急かされない為にも一先ず今の入れ歯に満足してもらう必要があります。そういうわけで、新しいものを渡すときは、古い入れ歯は特に問題ない状態で、新しいものと交換することになるのです。
自分なりに納得し、また理論上問題なく、かみ合せや吸着など完璧と思われるものが出来上がり、自信をもって患者さんに渡しても、噛みにくい、違和感がすごい等の苦情を言われます。口の中には入れ歯による傷も無く安定しているにもかかわらずです。
自分を信じて特に入れ歯を削るなどはせずに、患者さんにはとにかく新しい入れ歯を使う様にと念を押します。10日ぐらいすると古い入れ歯の時より色々なものが噛めるようになったと喜ばれます。
近隣の歯科医院で作ったばかりの入れ歯を持ってきて、使えないから作り直して欲しいと訴える方も多くいます。新しい入れ歯は噛み合わせなど古い入れ歯と全く異なります。慣れるまでは少々使いづらいのは当然です。
入れ歯は使っているうちに噛む面が磨り減ったりして噛み合わせが低くなってきます。古くなり調子が悪くなってしまった入れ歯を使っている人は、無意識のうちにその入れ歯にあわせた噛み方に変わってしまい噛みにくいながらもそれに慣れてしまいます。
合わないからといってすぐに諦めるのではなく、まずは作ってもらった先生を信じることが、入れ歯で苦労しない秘訣ではないでしょうか。
三上卓也(みかみたくや)先生
昭和42年神奈川県生まれ 神奈川歯科大学卒業 平成6年 神奈川歯科大学付属総合診療科勤務 平成8年 仁歯会 松井歯科医院勤務 平成11年 神奈川県三浦市にて開業 横須賀市歯科医師会/三浦臨海高校学校医/日本歯内療法学会所属 趣味はスクーバダイビング・写真(陸上/水中)・クラッシック音楽鑑賞・フルート演奏・旅行など多彩。三崎合唱会ではテノールを担当。
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