e-ha 通信 2005年2月
第1回 歯科医にとっての自分の虫歯
よく人から“歯医者さんが虫歯になったらどうするの?”と聞かれます。答えは“友達に治療してもらう”です。簡単なことですが、実はそこに行き着くまでが大変なのです。というのも、一応自分は歯科治療にたずさわっており、よほどの難症例でない限り診断や治療法が予想できるからです。
先日、右上の親知らずが虫歯で痛くなりました。この虫歯の存在は1年ほど前から気がついておりました。気がついていましたので歯磨きは念入りに行っていましたが、初期段階なので少しでも何かの変化があったら治療しようと思いそのままにしていました。…そして突然の痛み。
歯の痛みは、厳密にいうと細分化されますが、簡単にわけると「虫歯によるもの」と「歯肉炎(昔でいう歯槽膿漏)」によるものに大別されます。
虫歯による痛みは、刺激(冷水や温水や甘味料)などで起こりはじめ、進行すると夜寝られないぐらいの拍動痛になってきます。それに対して歯肉炎(歯槽膿漏)の痛みは、物を噛んだりすると違和感や痛みを感じたり、噛んでも力が入らないなどの症状から始まり、症状が進行すると何もしなくても鈍痛となります。虫歯との違いは往々にして、寝ているときにはあまり痛くありません。いずれの状態も放置しておくと身体に対してよくありません。
歯が痛くなると鏡で口の中をのぞきますが、しかし、自分の口の中ですからよく見えません。今回はその痛みの感覚から歯肉炎になったものと予想しておりました。歯肉炎の場合歯ブラシを念入りに行うと症状が徐々に軽減するのでそうしていましたが治る気配すらありません。
虫歯となると歯を削る関係で知り合いの誰かに頼むしかありません。自分が尊敬する先生は遠方のためすぐに行くことができませんでした。近くの歯科医院では以前自分のところに通っていた患者さんと出くわし気まずくなるかもしれないという不安があります。あるいは仕事上で様々なことを知ってしまっているため近隣の歯科医院に通うことを躊躇してしまう場合もあります。
あくる日の痛みはさらに激しくなり顔半分まで達しました。おまけに症状の末期を知っているが故、悪い結末ばかりが頭をよぎります。結局次の休診日まで我慢して、家から車で2時間のところで開業している信頼できる先輩の先生に診てもったわけですが、結果は歯肉炎の急性症状とそれに伴った虫歯の関連痛だったのです。
初期の虫歯だからといって放置してはいけません。今回は自分の口の中を精査できないということによる診断ミスが原因ですが、生半可な知識は気持ちを不安にさせるということを身をもって体験しました。
似たようなことは最近のマスメディアにもいえると思います。病気に関する特集は表現方法が誇張しすぎており、変に視聴者を不安に陥れているのではないでしょうか。身体の不調は自己の判断ではなく、実際先生に確認してもらい診断してもらうことが重要であるということを改めて考えさせられます。
三上卓也(みかみたくや)先生
昭和42年神奈川県生まれ 神奈川歯科大学卒業 平成6年 神奈川歯科大学付属総合診療科勤務 平成8年 仁歯会 松井歯科医院勤務 平成11年 神奈川県三浦市にて開業 横須賀市歯科医師会/三浦臨海高校学校医/日本歯内療法学会所属 趣味はスクーバダイビング・写真(陸上/水中)・クラッシック音楽鑑賞・フルート演奏・旅行など多彩。三崎合唱会ではテノールを担当。
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