2009年6月
第39回 背中を押してくれた人
「いいことをしようとする人には、必要なものが集まってくる」
そう言われたことがある。集いの場を創りたいと模索していた時だ。
私にはそんな場を先に始めた先輩で、兄貴的な存在の人がいた。
その人は、引きこもりや不登校の人たちが働ける場を開いていた。
自分のオフィスの一角を喫茶スペースとしてあつらえ、ローテーションで働けるようにしていた。
時々そこにおじゃましては、場の作り方を学んだり、相談に乗ってもらったりしていた。
そこで出されるコーヒーは、私の真っ直ぐすぎる気持ちを温めてくれた。
そこで迎えてくれる笑顔は、私の頑なな心をゆるめてくれた。
けれどそこに足を運ぶたび、思いは募る一方だった。
創りたい、私も。人が集える場を創りたい。
そしてある日、堰を切ったように思いの丈をぶつけた。
「創りたいんです、私もこんな場を。自分の手で創りたいんです。でも、それには建物がいるんですよね。場所を借りるにしてもお金のかかることですし。どうしたらいいのかわからないんです」
その人は一呼吸おくと、穏やかな微笑みをたたえて言った。
「亜紀ちゃん、不思議なものでね。いいことをしようとする人には、必要なものが自然に集まってくるんだよ。亜紀ちゃんにならきっと、必要な場所も、必要な人も、どこからともなく集まってくるよ。心配しないで、一歩踏み出してごらん」
「カチッ」
その言葉に心が決まった。
それからだ。夢を叶えるための行動を本格的におこし始めたのは。
必要な情報を集めにあちこち出向いた。
会う人会う人に想いを伝えた。
家を建てようと家族を説得した。
そうして頭の中だけにあったイメージが、少しずつ形となって現れ始めた頃。
その人は病気でこの世を去った。
Mさん、天国で見ていてくれますか?
あれから私も念願だった集いの場を創りました。
あなたが言ったとおりでした。
必要なものは全部集まってきました。
なんにも心配することなんてなかったんですね。
みんなが私を助けてくれます。みんなが私を応援してくれます。
今私は幸せです。
あの時勇気の一歩を踏み出させてくれてありがとう。
煮え切らない私を押し出してくれてありがとう。
私はあなたの意志を継ぎ、これからもみんなと元気にやっていきます!
大空の上から応援していてくださいね!!
※この度、初めて陽だまりサロンの活動が表彰されることになりました。たくさんの方のお力添えのおかげです。本当にありがとうございました。
そんなことを考えていたら、あの時背中を押してくれた人を思い出しました。それで、今回のコラムに取り上げたのです。
このお話は私の著書「子どもが輝く幸せな子育て」(ほんの木)にも詳しく書いております。機会がありましたらご覧下さい。
若松亜紀(わかまつあき)先生
1968年秋田県生まれ。1990年、秋田大学教育学部幼稚園教員養成課程卒業。私立秋田南幼稚園に7年間勤務。シュタイナー教育を保育に取り入れる。閉園により退職。
保育経験や育児を綴ったエッセイ「心で感じる幸せな子育て」(ほんの木)を出版。2005年「粗食のすすめ」の幕内秀夫氏との共著「マンガでわかる食育」(かもがわ出版)出版。教育関係広報誌への連載、講演活動、ラジオ子育てコーナーなども担当。2006年4月には「子どもが輝く幸せな子育て」(ほんの木)を出版しました。
現在は秋田市の自宅で、「出会いと生きがいづくりの場、陽だまりサロン」を運営。毎日たくさんの親子連れでにぎわっています。夫と10歳の娘(華凛)と、8歳の息子(飛龍)の4人暮らし。
陽だまりサロンのブログです。http://yaplog.jp/hi-damari/
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