2009年3月
第36回 キットダイジョウブ
「キット ダイジョウブ」
絵の具を溶いたような露草色。こんなに青い空を見たのは何ヶ月ぶりかな。渡り鳥が北に向かい、もうすぐ春がやってくる。
「主人の転勤で引っ越すことになりました」
この時期、決まって数人から連絡が入る。
「いつものこと。そう、いつものこと」
どんなに自分に言い聞かせても、やっぱりせつなさは消せない。その人と一緒にいた光景が思い出されて。
陽だまりに包まれて、肩を並べて笑ったね。「次は何をしようか」と、いたずらな顔しておしゃべりしたね。本のこと、子どものこと、これからのこと、時間(とき)を忘れて話したね。
あの笑顔も、声も。空気も、ぬくもりも。春になれば遠くなる。
ふいに寂しさが募り、彼女たちのブログを開く。ここに残す仲間のこと、ここに残した足跡のこと。揺れる気持ちが胸を打つ。
「キット ダイジョウブ
空は繋がっているし
心も繋がっているから 」
何日かたって。
「本を返しに来ました」
その中のひとりが尋ねて来てくれた。
「転勤先を訪れて、向こうで住む家を決めてきました」
そう言って微笑む彼女は、もう次に向かって歩き始めていた。
そう、泣いていたって朝日は昇る。洗濯物もたまってく。豆腐が切れたら買い物に行く。全ては昨日と同じく回っていくんだ。
だから、私も涙を拭いて顔を上げよう。あなたはあなたの住む場所で、私は私の住む場所で。与えられた地で精一杯。自分の花を開こうね。自分の色で咲かそうね。
この露草色は、どこまでもどこまでも繋がっている。
だから「キット ダイジョウブ」!!
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若松亜紀(わかまつあき)先生
1968年秋田県生まれ。1990年、秋田大学教育学部幼稚園教員養成課程卒業。私立秋田南幼稚園に7年間勤務。シュタイナー教育を保育に取り入れる。閉園により退職。
保育経験や育児を綴ったエッセイ「心で感じる幸せな子育て」(ほんの木)を出版。2005年「粗食のすすめ」の幕内秀夫氏との共著「マンガでわかる食育」(かもがわ出版)出版。教育関係広報誌への連載、講演活動、ラジオ子育てコーナーなども担当。2006年4月には「子どもが輝く幸せな子育て」(ほんの木)を出版しました。
現在は秋田市の自宅で、「出会いと生きがいづくりの場、陽だまりサロン」を運営。毎日たくさんの親子連れでにぎわっています。夫と10歳の娘(華凛)と、8歳の息子(飛龍)の4人暮らし。
陽だまりサロンのブログです。http://yaplog.jp/hi-damari/
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