2007年5月
第14回 花咲き実れ女たち!
満々と水をたたえた田植え前の田んぼに、カエルの声がこだまする。ゲロッゲロッゲロッをBGMに、朝日のシャワーを浴びながら歩くひとときが好き。
ずっとやりたかったウオーキングを始めたのだ。母でもなくて、妻でもない。光の中でたった一人。なんだか不思議な感覚に包まれる。ふうわ、ふうわり、今まで誰かが言った言葉や場面が浮かんでは消える。
「どうして陽だまりサロンは、すごいことになってるんですか?」 先日取材にいらした記者さんの、そんなひと言がよみがえった。
「取材」。自分の今まで歩んできた道を、ひとつひとつ見つめ直す作業。
いつも前を向いて突っ走っている私にとって、後ろを振り返り振り返り足跡をたどるそれは、ちょっと苦しく、そしてちょっと面白い修行のようなものだ。そんな非日常の、独特の空気感を持った時間は、時に自分でも気付かなかったことに気付かせてくれる。
「すごい?何がどうすごいんですか??」
「普通の親子が集まる場所とは、何か雰囲気が違うような気がして。他の育児サークルなんかだと、どなたかが紙芝居を読んだり手あそびしたりしますよね。でもここはお母さんたち向けの講座が毎日あって。しかも!なんなんでしょう、この講師陣の充実ぶりは。どこからどうやって、こういった優れた人材を集めてくるのですか」
ううむ。
普段何気なく通過しているあれこれをあらためて言葉にするには、あまりに語彙力が足りずしばし沈黙。
「・・・みんなが、助けてくれるんです。自分にはこれができる、自分はこんな事なら手伝えるって持ち寄ってくれて」
「磁石みたいですね」
「そうかもしれません。それでみんなであーでもない、こーでもないとわいわいやってると『なんだか楽しそう』って、また人が集まってくる」
「楽しいところに人は集まりますからね」
「そう。そうやって出会った人に刺激を受けて『私も何かできるはず』と、次の人材が育ってくる。・・・こういうの、なんて言うんでしたっけ?」
・・・・ 「好循環!!」 二人同時に、おんなじ言葉を叫んだ。
そうだ。陽だまりサロンは好循環しているんだ。
うつむき加減で訪れた人が、誰かの活躍を眼にして、次第次第に視線を上げる。分度器でいえば、わずか15度。たったそれだけの差で見える世界が変わり、広がり、輝き始める。
そうして心に何かが芽生えた人から順に、コロコロと軽やかに回り始めるのだ。そう、それはもう、見ていて気持ちいいほどに。
でもホントはそれって「陽だまりサロンは、すごい」のとは違う気がする。
だって、誰でも種を持っているんだから。最初から、何かの素質を持って生まれているんだから。
今までそれがわからなかっただけ。ここに来て、人に、才能に、能力に触れて、眠っていたものがザワザワしてきたんだよ。
「すごい」のは、ここに集まるひとりひとり。サロンはそれに「もう起きて」と揺さぶりをかける、スイッチなのかもしれないね。
田んぼのあぜにダシが並び、田植えの準備が始まった。秋には稲穂が頭を垂れる。
この小さな苗とともに、空に大きく背伸びして、花咲き、実れ、女たち!
若松亜紀(わかまつあき)先生
1968年秋田県生まれ。1990年、秋田大学教育学部幼稚園教員養成課程卒業。私立秋田南幼稚園に7年間勤務。シュタイナー教育を保育に取り入れる。閉園により退職。
保育経験や育児を綴ったエッセイ「心で感じる幸せな子育て」(ほんの木)を出版。2005年「粗食のすすめ」の幕内秀夫氏との共著「マンガでわかる食育」(かもがわ出版)出版。教育関係広報誌への連載、講演活動、ラジオ子育てコーナーなども担当。2006年4月には「子どもが輝く幸せな子育て」(ほんの木)を出版しました。
現在は秋田市の自宅で、「出会いと生きがいづくりの場、陽だまりサロン」を運営。毎日たくさんの親子連れでにぎわっています。夫と10歳の娘(華凛)と、8歳の息子(飛龍)の4人暮らし。
陽だまりサロンのブログです。http://yaplog.jp/hi-damari/
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