2006年11月
第8回 親切のバトン
いくらか大人になったのだろうか。いつもならおいしい物やファッションに心動かされる秋なのに。
今年はやたらと紅葉見物に血が騒いだ。家族と行って友だちと行って、それでも足りなくて、一人で何度も車を走らせた。遠くの仕事に行くにも、わざわざ山道を選んだりして。
黄色や赤が、なぜ信号に使われているのかわかった気がした。真っ黄っ黄なイチョウを見つけては「おお〜」と速度をゆるめ、真っ赤な紅葉に至っては「写真に納めねば」と車を止める。「ふむふむ、信号は理にかなっているな」と感心することしきりであった。
そんな秋の一日、薬局をオープンさせた友人の話を聞く機会があった。
陽だまりサロンにもちょくちょく顔を出してくれ、うちで人気の「夢実現講座」で学んでいた方だ。この講座、あまりの人気で人が入りきらなくなり、定期的に大きな会場を借りて「分科会」を開くようになったのだ。
久しぶりに会ったその人は、以前とはまるで違った光を放ち、正に光り輝いていた。
「こんなに早く開店できるなんて、思ってもみなかったんです」
開口一番、彼女はそう切り出した。
「だって私、貯金ゼロだったんですから」「いつもぎりぎりの線で助成金がおりたり、株式の制度が変わったり、好都合なことが次々起きて」
「こうなりたという強い想いがあれば、結構なんとかなっちゃうんですよね」
実際に夢を叶えた人の口からこぼれる言葉は重みがあり、聞く人が皆熱心にペンを走らせていた。
「紙に書いてみるといいですよ。するといつの間にかそうなってることが多いから」
そのアドバイスに従い、それぞれがやりたいこと、欲しいものなどを書き付けていった。
しばし頭を悩ませた後、一人の女性がそれを読み上げた。
「私は、子ども連れで気軽に入れるレストランを作ります。今から3年〜5年の間に。7台車が止められる駐車場を確保します」
頭の中にはしっかりと青写真ができているのだろう。メニューはこういうもので、席数はこのくらいでと話す眼差しは、しっかりと前を見据えていた。
それに引き替え今の私は、次の目標が見つからずに白紙状態という有様。
「はは。。。テストなら0点だわさ」
友人に負けず劣らずキラキラしたみんなが、なんだかやたらと眩しく見えた。
「そういえば私も、今までたくさんの方からお力を借りてきたな。。。」
彼女たちの話を聞きながら、サロンを開きたかったあの頃の自分や、オープンまでのあれこれが思い出された。
「次は私が誰かを助ける番だ。自分が受けたご恩を、次の誰かに手渡していこう」
忙しさに紛れて忘れ気味になっていた気持ちが、おかげでまたぶり返してきた。
「親切のバトンをまわす」
真っ白な紙にたったひとつ、力いっぱいしたためた。
みんなの夢が叶いますように。
若松亜紀(わかまつあき)先生
1968年秋田県生まれ。1990年、秋田大学教育学部幼稚園教員養成課程卒業。私立秋田南幼稚園に7年間勤務。シュタイナー教育を保育に取り入れる。閉園により退職。
保育経験や育児を綴ったエッセイ「心で感じる幸せな子育て」(ほんの木)を出版。2005年「粗食のすすめ」の幕内秀夫氏との共著「マンガでわかる食育」(かもがわ出版)出版。教育関係広報誌への連載、講演活動、ラジオ子育てコーナーなども担当。2006年4月には「子どもが輝く幸せな子育て」(ほんの木)を出版しました。
現在は秋田市の自宅で、「出会いと生きがいづくりの場、陽だまりサロン」を運営。毎日たくさんの親子連れでにぎわっています。夫と10歳の娘(華凛)と、8歳の息子(飛龍)の4人暮らし。
陽だまりサロンのブログです。http://yaplog.jp/hi-damari/
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