2006年7月
第4回 おにぎり
梅雨の合間にのぞく澄み渡った青空は、全てのけがれを流しきったようで目にしみる。
ほんの少し前まで辺りいっぱいに響いていたカエルの声も、少しずつセミにその座を渡し始めた。
「もうすぐ暑くなるな」
夏の気配が、さらりさらりと衣ずれのように近づくこの季節。なんだか訳もなくそわそわしてくる。
昨年の夏休み。陽だまりサロンでは、子どもたちが楽しめるようにと、「おにぎり作りとスイカ割り」を企画した。
実はこれ、小学生のママたちの、昼ご飯対策も兼ねてのことである。
子どもが学校に行った日、”家に残った”母の昼飯もまた”残り物”である(注:若松家の統計による)。
残り物同士、ウマが合う。いや、次の日の昼に食べようとわざと寄せているのだが。ううむ、どっちにしろ残り物は残り物か。。。ちと、悔しい。
それが夏休みとなると状況が一変。食べ盛りの子どもたちに残り物は通用しない。結果、暑い中うんうん汗を流して、そうめんやら何やら作ることになる。
「やってらんない」
給食に任せっきりになっている私の、正直な気持ちである。
きっとよそのお宅も似たり寄ったり。ならばたった一回でも、ママたちの負担を減らしてあげよう。そんなおせっかい気分で企てたこの企画は、大盛況のぎゅうぎゅう詰めだった。
たかがおにぎり作り、されどおにぎり作り。たった5合しか炊けないうちの釜で、朝から何度となくご飯を炊き、塩を混ぜ、具を用意し、海苔を切り分ける作業に追われた。
作業が始まると、あっちで器ごとご飯をひっくり返す子、こっちでけんかを始める子と、その対応に目の回るような忙しさ。
「そうめん3人分作ってるほうが、よっぽど楽だったよ」
夕立にあったような大汗状態で、ぽつりつぶやく。
それでも、「おいしい」「おかわり!」と言われると弱いんだな、これが。
迎えに来たママたちの、「ありがとう」「助かったわ」にもね。
この仕事、自己満足の世界だけれど、「私も誰かのお役に立てたかな」、そんな気持ちが清々しく、明日への原動力となっている。
今年はこれ、近くに住んでいらっしゃるおばあちゃんたちが担当してくれる。題して、「おいなり作りとスイカ割り」(スイカ割りはマストアイテム)!世代間交流も兼ねたこの催し。今度は私も、も少しゆっくり楽しませてもらうこととしよう。
夏休みを指折り数える子どもたち。昨日より少し上手に鳴けるようになった、セミの声がこだました。
若松亜紀(わかまつあき)先生
1968年秋田県生まれ。1990年、秋田大学教育学部幼稚園教員養成課程卒業。私立秋田南幼稚園に7年間勤務。シュタイナー教育を保育に取り入れる。閉園により退職。
保育経験や育児を綴ったエッセイ「心で感じる幸せな子育て」(ほんの木)を出版。2005年「粗食のすすめ」の幕内秀夫氏との共著「マンガでわかる食育」(かもがわ出版)出版。教育関係広報誌への連載、講演活動、ラジオ子育てコーナーなども担当。2006年4月には「子どもが輝く幸せな子育て」(ほんの木)を出版しました。
現在は秋田市の自宅で、「出会いと生きがいづくりの場、陽だまりサロン」を運営。毎日たくさんの親子連れでにぎわっています。夫と10歳の娘(華凛)と、8歳の息子(飛龍)の4人暮らし。
陽だまりサロンのブログです。http://yaplog.jp/hi-damari/
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