2006年5月
第2回 あのころの私
大好きな布団干しができる季節になりました。
「おっ、今日も上天気。布団干し日和じゃ〜」
北国に住む人間の性なのでしょう、長い冬を抜けて、再び巡り会うお日様に心が弾みます。
「よっこらせっと」
重い布団を人数分手すりにかけ、ぐーんと太陽を見上げて深呼吸。私はこの、心も体も思いっきり解放される春が大好きです。
ちょうど去年の今日、娘が小学校に入学しました。あれから1年。娘は私の心配をよそに、たくさんの友達を作りおやじギャグを連発しています(例1、トド缶に手が届かん)。
去年、入学式で歓迎の歌や縄跳びを披露してくれた2年生を、ただただ「すごいっ」と尊敬のまなざしで見ていたのに、今年は娘がその立場になりました。1年でこんなに成長した娘が、なんだか頼もしく思えます(おやじギャグは別として。例2、アルミ缶の上にあるミカン)。
そんな折り、車を走らせていて、ふと自転車をとめて立っている女性が目にとまりました。年のころは18、9でしょうか。手には地図を持っています。瞬間、ほんの数年前(ウソです)の自分の姿がフラッシュバックしました。
秋田市の学校に進学するために、初めて親元を離れてこの街に来たころ。右も左もわからずに、でもたった一人で狭いアパートにいることに耐えきれず、ふらっと外に出ました。やはり、片手に地図を持ちながら。
なんのあてもなく立ち寄った店。「そういえば、入学式につけるヘアピンでも買おうかな」。そんなことを思い立ち、店員さんに声をかけました。
「すみません、あらたまった式の時はどんなのがいいでしょうか?」 「あら、入学式? おめでとうございます。こんなのはいかがかしら。。。」
そんなたわいもない話をし、その人が見立ててくれたピンを買い、ほこほこした気分で店を出ました。
本当はヘアピンなんてどうでもよかったんです。だれかと話がしたかっただけ。その日はまだ、だれとも話していなかったから。
「陽だまりサロン」に来る人もまた、そんなふうに話し相手を求めているのでしょう。人は、一人では生きていけないから。だれかと一緒にいて話をするだけでも救われるから。聞いてもらえるだけで、その日1日ハッピーになれるから。
そんな経験を、今まで何度となくしてきました。たくさんの人に助けられて、ここまで来ました。だから次は、私が見知らぬだれかに恩返しをする番だと思っています。
「がんばってね、私でよければいつでも話し相手になるよ」
そうつぶやきながら、バックミラーにだんだん小さくなる彼女を見送りました。
若松亜紀(わかまつあき)先生
1968年秋田県生まれ。1990年、秋田大学教育学部幼稚園教員養成課程卒業。私立秋田南幼稚園に7年間勤務。シュタイナー教育を保育に取り入れる。閉園により退職。
保育経験や育児を綴ったエッセイ「心で感じる幸せな子育て」(ほんの木)を出版。2005年「粗食のすすめ」の幕内秀夫氏との共著「マンガでわかる食育」(かもがわ出版)出版。教育関係広報誌への連載、講演活動、ラジオ子育てコーナーなども担当。2006年4月には「子どもが輝く幸せな子育て」(ほんの木)を出版しました。
現在は秋田市の自宅で、「出会いと生きがいづくりの場、陽だまりサロン」を運営。毎日たくさんの親子連れでにぎわっています。夫と10歳の娘(華凛)と、8歳の息子(飛龍)の4人暮らし。
陽だまりサロンのブログです。http://yaplog.jp/hi-damari/
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